相続土地国庫帰属制度は「土地を国にあげられる制度」。背景とメリット・デメリットを解説
相続土地国庫帰属制度とは「土地を国にあげられる制度」
2023年、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が施行されました。この法律に基づき新たに生まれた制度が、相続土地国庫帰属制度です。
相続によって取得した土地が以下の条件に当てはまる場合に、相続人がこの制度の利用を国に申請し、承認されれば一定の料金を払い、土地を引き取ってもらえます。
1)相続や相続人への遺贈で取得した土地であること
2)土地が共有であるときは、共有者全員が共同して行うこと
3)一定の却下事由に該当する土地ではないこと
この制度が生まれた背景にも触れておきましょう。
相続によって得られる土地の利用価値はそれぞれに異なります。特に、地方部の土地は売ってもほとんどお金にならないほど価値が低く、管理の手間やコストを考えるとかえってマイナスになることもあるでしょう。
そのような土地は売ることもできず「相続したら自分で管理を続ける」しか選択肢がありませんでした。このような状況を打開するために生まれたのが、相続土地国庫帰属制度と考えましょう。
相続土地国庫帰属制度のメリット・デメリット
相続土地国庫帰属制度のメリットは、いらない土地だけを手放し、必要な土地は所有し続けられることでしょう。また、売却する場合と違い、国を相手にやり取りするので引き受け手を探す必要もありません。さらに、素性の分からない相手に土地を渡してしまい、反社会的行為に使われるリスクも避けられます。
一方、デメリットとしては、すべての土地に使えるとは限らない点が指摘できるでしょう。すでに触れた通り、相続土地国庫帰属制度は、一定の条件を満たさないと利用できません。
共有名義になっている場合は、共有者全員の同意が得られないと、手続きもできないことになります。また、手続きにあたっては費用を負担しなくてはいけません。
宅地の場合、原則として20万円がかかりますが、都市計画法における市街化区域または用途地域が指定されている宅地だった場合は、面積に応じて費用がかかります。土地の広さやロケーションによってはかなり自己負担が増えてしまうでしょう。
そして、始まって間もないため、この制度を使って国に土地を引き継ぐまでの所要期間がわからないのも実情です。
現実的には、現地調査なども必要になるため、数カ月から1年程度はかかると考えられています。相続で得た土地を手放すには、売却など他の方法も考えられるため、どの方法を使うべきかは税理士などの専門家に相談してみましょう。