オフィスを引っ越すなら「地域未来投資促進税制」は要検討。概要と利用条件を簡単に解説します
コロナ禍で地方移転もアリになりました
2020年初頭から日本を含めた世界中を混乱に巻き込んだ新型コロナウイルス感染症も、全国民の半分がワクチンの2回目接種を終えたり、自宅療養中でも治療が受けられる体制が整ってきたりなど、着実に一歩一歩良い方向に進んでいます。しかし、企業にとっては「外出がままならないほどの災害が起きても、できるだけ通常業務を止めずに対応できる体制を作り上げること」が重大な経営課題として残りました。
もちろん、企業の業種や規模、経営者の考え方によって異なるので一概には言えませんが「テレワークを本格導入する」「首都圏にあった本社機能の全部・一部を地方に移転する」など、様々な方策が考えられます。後者の具体例として、通信販売大手「ジャパネットたかた」で知られるジャパネットホールディングスが、主要機能を福岡市に移転するなどの取り組みを行っています。
企業にとっては、首都圏に本社機能を集中させないことで、感染症の拡大などの災害が首都圏で起きたとしても、通常通り業務を進めることができます。また、移転先となる自体にとっても、税収が確保できる上に、雇用の創出にも役立つため「どちらにとっても良い話」かもしれません。
地域未来投資促進税制とは
国は、地域の特性を生かして、高い付加価値を創出し、地域経済を牽引する事業への積極的な投資を推進することを目的に「地域未来投資促進税制」を設けています。
簡単に言うと、条件を満たした上で地方に拠点を移したり、新しい事業所・工場などを経てて人を雇ったりなどすれば、機械装置や器具備品、建物・建物附属設備および構築物について特別償却(最大50%)、税額控除(最大5%)が受けられる税制です。なお、令和5(2024)年3月31日までに事業の用に供した資産について適用が可能となるため、これから地方へのオフィスの移転を考えている場合でも、早めに動けば十分に間に合います。
なお、実際にこの税制を使うためには、最初に都道府県知事による地域経済牽引事業計画の承認を受けなくてはいけません。つまり、基本計画が「地域特性の活用」「高い付加価値の創出」「地域の事業者に対する経済的効果」の3つを満たしているかが問われます。
また、これをクリアしたら、次は国による課税特例の確認を受けなくてはいけません。「先進性を有する」「総投資額が2,000万円以上である」「前事業年度の減価償却費の10%以上の投資額である」「対象事業の売上高伸び率がゼロ超、かつ、過去5事業年度の対象事業に係る市場規模の伸び率が+5%以上である」の4つの条件を満たしているかがチェックされます。
「機械装置、器具備品、建物、建物付属設備および構築物で、その取得価額の合計が2,000万円以上のもの」に対してこの制度使える上に、限度額が80億円までとかなり大きいため「オフィス機能を地方に移転する」ときには積極的に活用したい制度です。早めに税理士に相談しておきましょう。