従業員のために使う新型コロナ対策の費用。所得税の課税関係は?
新型コロナから従業員を守ろう
2020年初頭から新型コロナウイルス感染症が日本を含めた世界中で大流行しています。
当然、企業活動にも大きな影響を及ぼしているのが実情です。その中で、会社を経営していくことの厳しさを痛感している事業主の人も多いでしょう。
さて、事業主には「安全配慮義務」が課せられています。簡単に言うと「従業員が病気やケガをしないため、快適な職場環境を保てるよう、最大限の努力をすること」です。今回の新型コロナウイルス感染症の場合は「在宅勤務を導入する」「マスク、消毒薬など感染対策グッズを支給する」「定期的にPCR検査を受けさせる」なども、この安全配慮義務の中に含まれます。
実際のところ「外出もほとんどせず、うがい手洗いなどの対策をぬかりなくしていたのに、新型コロナウイルスに感染した」という人も一定数いる以上「何をすれば大丈夫なのか」は断言できません。それでも、できる対策を講じるのは必要です。ある意味、従業員と会社を守るための必要経費ともいえる以上、所得税の課税関係=従業員にとっての給料に当たるのかどうか、については正確に理解しておきましょう。
ポイントは「業務のために通常必要かどうか」
考え方は非常にシンプルです。「業務のために通常必要かどうか」つまり、仕事をしていく上で欠かせない費用であるかどうかがポイントになります。
例えば「仕事中に着用するマスク、アルコール消毒液」「職場でクラスターが発生したため隔離場所として会社で予約したホテル」「従業員および顧客の安全を確保するために、会社で定期的に受けさせているPCR検査の費用」は、会社で仕事をするために必要な費用(経費)にあたるため、従業員に対する給与としては扱われません。この場合、会社側は消耗品費、旅費交通費、福利厚生費などとして、損金の額に算入できます。
しかし、これらが「従業員の自己判断に基づいて行った、使った」ものであって、会社が代わりに支払っていたという場合は、給与として所得税課税の対象となります。従業員に対して現物給付を行ったことになるためです。もちろん、この場合、会社側は給与として損金の額に算入することになります。
なお、国税庁のWebページには「5 新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係」という形で、新型コロナウイルス感染症の様々なシチュエーションを想定した税務上の扱いについて解説するコーナーが設けられています。随時、様々な情報が追加されているので、こまめにチェックしておきましょう。